今回はボルチモア・レイブンズを掘り下げてみましょう。ここも若いチームですが、実はそうじゃないんですね。じつは歴史があるんですね。そんなことも含めて色んなストーリーのあるチームです。
- メリーランド州の特徴
- ボルチモアとはどんな街か?
- チーム「レイブンズ」の歴史
- レイブンズの戦績
- レイブンズのオーナー、スティーブ・ビシオッティ
- レイブンズのコーチ陣
- O#チーム主要選手
- QBラマー・ジャクソン(Lamar Jackson) #8
- RBデリック・ヘンリー(Derrick Henry)
- RB ダルヴィン・クック(Dalvin Cook)#31
- WR ゼイ・フラワーズ(Zay Flowers)#4
- WR ラショッド・ベイトマン(Rashod Bateman)#7
- WR ネルソン・アゴロー(Nelson Agholor)#13
- TEマーク・アンドリューズ(Mark Andrews)#89(IR)
- TE アイザイア・ライクリー(Asaiah Likely)#80
- LTルーニー・スタンリー(Rooney Stanley)#79 OT
- OG アンドリュー・ヴォーヒーズ(Andrew Vorhees)#72
- C タイラー・リンデーバウム(Tyler Linderbaum)#64
- OG ベン・クリーブランド(Ben Cleveland)#66
- OG パトリック・メカリ(Patrick Mekari)#65
- FB パトリック・リカルド(Patrick Ricard)#42
- Kジャスティン・タッカー(Justin Tucker)#9
- D#チーム主要選手
- DE ジャスティン・モデュブイケ(Justin Madubuike)#92
- NT マイケル・ピアス( Michal Pierce)#58
- DE ブロデリック・ワシントン(Broderick Washington)#96
- LB オダフェ・オウウェ(Odafe Oweh)#99
- LB ロークワン・スミス(Roquan Smith)#0
- CB マーロン・ハンフリー(Marlon Humphrey)#44
- SS カイル・ハミルトン(Kyle Hamilton)#14
- FS マーカス・ウィリアムス(Macus Williams)#32
- CB ブランドン・ステファンズ(Brandon Stephens)#21
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メリーランド州の特徴
ボルチモアという街は、メリーランド州にあります。メリーランドという州を初めて聞いたという人も多いかと思います。僕はそうでした。さて、まずこの州の情報から紹介していきます。
拡大するとこういう形の州、なんか変な形ですね。半島の右側(東側)がデラウェア州。西側はウェストバージニア州、バージニア州、北側はペンシルバニア州です。
州人口は約600万人。州都は人口36,000人 のアナポリス(Annapolice)という港町です。最大の都市がボルチモアで65万人。ボルチモア都市圏人口で260万人と、州の4割くらいが集まってる状況ですね。
メリーランドは「メリーの土地」「メリーの領地」「メリーの街」という意味です。さて、このメリー(メアリー or マリア)さんはどういう人かを紹介します。
これがメアリー(Maria)さん。正式名称は、ヘンリエッタ・マリア・オブ・フランス(Henrietta Maria of France)。1600年代のイギリスの王、リチャード1世の妻だった人です。彼女はカトリック信者、リチャード1世はイギリス国教会。国内にはピューリタン。カトリックと結婚したことで国内が荒れて、ピューリタンが王室転覆の革命が起こるんですね。そんな人が名前の由来です。
さて、メリーランドに移り住んだイギリス人は、この地に街をつくります。だから当初はリチャード1世の国領地だったわけです。しかし移民はカトリック派の人が多く、彼らはマリアのことを敬愛していたので、リチャードランドとせず、メリーランドと命名したんです。このあたりが、マサチューセッツ州に移ったピューリタンとは理念・哲学が違うんです。(単純に聖母マリアのことを言うんだという説もあります)
メリーランドはGDP(生産高)という経済指標だけを追い求めることなく、福祉度合いを高める政策をずっと取り続けてきた街です。そのため、アメリカ50州のうち、中間所得者層のボリュームが大きい。つまり最も貧富の差が少ない、もっとも裕福な州です。
メリーランドはバイオテクノロジー産業の集積地です。ジョンズ・ホプキンス大学を中心に様々な知的産業が集まっております。最もGDPというか生産量が多いのは当然ながら製造業である三次産業ですが、時代に次にくる産業へしっかり人的投資を行っているのがすごいですね。
さて、次からは本拠地であるボルチモア市について紹介します。
ボルチモアとはどんな街か?
この州はアメリカで最古の街の1つとして数えられる歴史のある街です。東海岸沿いに位置しており、メリーランド州の州都として経済的にも力をもっている街です。アメリカ南北戦争では戦火の真っ只中にあった街として有名です。
南北戦争が終わった後に、ペンシルバニア炭鉱により工業が発展。港をもっていたので、造船業、鉄鋼業などで大きく成長。19世紀では100万人を超える規模の人口集積地で、アメリカ10指の都市でした。そして現在でも市域人口65万人、都市圏人口240万人の規模があり、アメリカでも人気のある有名都市です。
この街が生んだ最たるものは「国歌」と「星条旗」です。アメリカのナショナリズムを代表する2つを生んだ街として有名です。
国歌が生まれたのはアメリカ独立戦争のときです。舞台は、大激戦地となったメリーランド(ボルチモア)にあったマクヘンリー砦。15000発にも及ぶ英国軍の攻撃をしのぎきり、メリーランド兵は25時間この地で英国軍を撃退。激戦となったマクヘンリー砦に立つ、たなびく旗をみて、詩人が詠ったものが現在の「星条旗よ永遠なれ」となったと言われています。
Beyonce singin the National Anthem(HD)
おお、見えるだろうか。夜明けの薄明かりの中 我々は誇り高く声高に叫ぶ。危難の中、城壁の上に雄々しく翻る、太き縞に輝く星々を我々は目にした
砲弾が赤く光を放ち宙で炸裂する中、我等の旗は夜通し翻っていた
ああ、星条旗はまだたなびいているか?自由の地 勇者の故郷の上に!
これが後に「星条旗よ永遠なれ」と名付けられるアメリカの国歌です。
ボルチモアの名産品「アンダーアーマー」です。アスリートなら誰でも知ってるスポーツアパレルのUNDER ARMOUR。この本社があるのがボルチモア市です。メリーランド大学フットボール部出身のケヴィン・プランクが地元で事業を立ち上げました。コットン素材のウェアに代わる新素材。ということでセカンドスキンと呼ばれるコンプレッションウェアを発明。これが爆発的にヒットし創業10年程度で世界中にユーザーをもつまで成長しています。
ボルチモアの名産品「蟹」「オールドベイ」。もともと漁港として発展した街で、海産物が美味しいらしいです。中でも有名なのが「スチーム・ブルー・クラブ」という蒸した蟹。それにオールドベイという地元名産の専用調味料をバンバンふりかけて、テーブルの上にごちゃ~と並べて、手づかみでワッシワッシ食べる。日本でも「ダンシング・クラブ」という手づかみシーフード料理店がありますが、それらのルーツですね。
チーム「レイブンズ」の歴史
アメリカを代表する作家「エドガー・アラン・ポー」がボルチモア在住している時に書いた作品「ザ・レイブン」が由来です。ちなみに意味は「大ガラス」チームのデザインもカラスがモチーフになっています。
レイブンズはもともとはクリーブランド・ブラウンズです。レイブンズの創業オーナーとなった人は、ブラウンズのオーナーでした。CLEのスタジアムが老朽化があんまりにひどいので、オーナーのアート・モデルさんは、違う町に本拠地移転を検討するんですね。
そうしたら「ふざけるな!言語道断だ!」と地元市民が大反対し市民運動になったんです。それで当時のオーナーは、夜逃げするかのようにボルチモアに別の球団を作ってそこに選手も移籍、それがレイブンズです。当時はボルチモア・ブラウンズだったんですが、これもクリーブランド市民から、「ブラウンズの名前使うな!!」と反発を食いまして、名前を決める事になりました。
レイブンズの戦績
1996|オーナーのアート・モデルがブラウンズを移転。レイブンズに改名
2000|第35回スーパーボウルを制覇 (vs ジャイアンツ)
2012|第47回スーパーボウルを制覇 (vs 49ers)
もともとボルチモアはフットボール熱が盛んな地域です。それは以前この町に、コルツがあったからです。以前はボルチモアコルツと言いましたが、これがインディアナポリスに移動するんですね。スーパーボウル制覇した地元チームのコルツがいなくなりまして、ボルチモア市民は意気消沈。そこで浮上したブラウンズ移動!ボルチモア市民は、新たなわれらがチームを大歓迎します。そうして、異常とも言えるボルチモア市民の応援に、新チームレイブンズは創設5年目にスーパーボウル制覇!その12年後も制覇してます。
しかし地区優勝はたったの4回。一見ワースト2位の記録なのですが、これは同地区にPittsburghスティーラーズがいるからかも。ワイルドカード6回で、合計プレーオフには10回でてますね。設立22年目ですから、そう悪くはない感じです。
レイブンズのオーナー、スティーブ・ビシオッティ
世界4位の人材派遣会社「アレジス・グループ」のオーナー。その前身であるアエロテック(Aerotek)社の創業者。アエロテックは航空宇宙産業への人材派遣に特化していたが、そこから大きくビジネスを成長させた。現在もボルチモアに本社を構えている。もちろん日本法人もある。
ビシオッティさんは名前の通りイタリア系アメリカン。ペンシルバニアの中流階級の末息子。現在58歳。詳しくはこちらにまとめてありますので、御覧ください。
レイブンズのコーチ陣
ヘッドコーチはジョン・ハーボー(John Harbaugh)
ジョン・ハーボーさんはオハイオ州、1962年生まれの人です。レイブンズには2008年からHCとして就いて、2019年で12年目のシーズンを迎える。第47回スーパーボウルを優勝しています。かなり長期政権といって良いでしょう。弟のジム・ハーボーはかつて49ersのHCとして、スーパーボウルで対戦。弟は現在ミシガン大学のHCとして活躍しています。
OC トッド・モンケンさん
1966年生まれの57歳。かなりのベテランさんです。レイブンズにきたのは2023年からで今年は初年度。うまいことやってる感じしますよね。一人息子のトラビスもアーミー学校でヘッドコーチしています。
DC マイク・マクドナルド
36歳と若いDC。2021年はミシガンでDCをしてましたが、レイブンズ歴は長く2014年〜2020年までの7年間在籍してたので、生え抜き人事という印象です。レイブンズDCとして2年目。今年のレイブンズも強いですよね。
O#チーム主要選手
QBラマー・ジャクソン(Lamar Jackson) #8
2018 / 1巡 /32位 / ルイビル大
新QBをそろそろ担保したいと願っていたレイブンズが獲得したQB。ルイビル大学でハイズマン賞を受賞した選手。フラッコとは違い、自分でもガンガン走るモバイル型QB。 特に2019年シーズンはスクランブルしまくって対戦相手をとことん蹂躙。RBかと思うくらいで合計1,206yds走りました。またパスの精度もめちゃくちゃ良くて、D#チームは為す術もない状態。QBレイティングも満点を2回だして、最優秀選手、最優秀攻撃選手のダブル受賞。
RBデリック・ヘンリー(Derrick Henry)
2016 / 2巡 / 45位 / アラバマ大
「現在最強のRBは誰か?」と聞かれたら、10人中5人くらいは彼の名前を上げるのでないでしょうか。ついにタイタンズからレイブンズに移籍決定。 アラバマ大学時代にハイズマン賞を受賞してて、大学ナンバーワン選手と評価も高かった。2019年シーズンはOLの活躍もあり、あらゆるチームをランで蹂躙してきました。
RB ダルヴィン・クック(Dalvin Cook)#31
2017 / 2巡 / 41位 / FSU
バイキングスのエースRBとして有名な選手。2023年からジェッツに移籍したんですが、2024年の1月2日にジェッツと決別。そして1月4日にプラクティススクワッド契約でレイブンズに合流。1月18日にロースター登録。プレイオフだけの話だったので、2024年シーズンの契約はまだ終わってない。
WR ゼイ・フラワーズ(Zay Flowers)#4
2023 / 1巡 / 22位 / ボストン・カレッジ
今年補強した1巡スターWR。ベッカムJrもいるけどムラっけもあるし、フラワーズのほうがいい。チームのエースレシーバー的存在で、パスターゲットになってるのが群を抜いて多く108回。2番手は64回のOBJ。今年はレシービング858yds、77レシーブ。ルーキーですが十分な活躍をしてます。ポストシーズンで一皮むけるかも。
WR ラショッド・ベイトマン(Rashod Bateman)#7
2021 / 1巡 / 27位 / ミネソタ大学
QBジャクソンのメインターゲットとなるかどうか。数々のオプションの一つとなるのは間違いないです。ミネソタ大学から1巡指名がでたのは、2006年以来久々のことです。レイブンズのスター選手となってくれることを期待ですね。
WR ネルソン・アゴロー(Nelson Agholor)#13
2015 / 1巡 / 20位 / USC
なんて呼んでいいかわかんない人。多分アゴロー。イーグルスで5年、レイダースで1年、ペイトリオッツで2年、そして2023年からレイブンズへ。WRとしても10年目となるので、そろそろピークアウトしていく年齢でしょう。
TEマーク・アンドリューズ(Mark Andrews)#89(IR)
2018/ 3巡/ 86位 / オクラホマ大
これからボルチモアを背負って立つ選手にそだって欲しい。2018年は50回パスターゲットになって、552ydsをレシーブ。3本のタッチダウンの実績。今後ますます成長していってほしいですね。
TE アイザイア・ライクリー(Asaiah Likely)#80
2022 / 4巡 / 139位 / コーストカロライナ
LTルーニー・スタンリー(Rooney Stanley)#79 OT
2016 / 1巡 / 6位 / ノートルダム大学
O#メンバーで数少ない1巡指名選手。やはりレフトタックルには最高の人材がほしいですよね。彼はOL輩出の名門ノートルダム大学出身です。契約金額は5年のルーキー契約を終えて、5年$98Mと大型延長契約を締結。オフェンスラインの要となる選手です。
OG アンドリュー・ヴォーヒーズ(Andrew Vorhees)#72
2023 / R7 / 229 /USC
C タイラー・リンデーバウム(Tyler Linderbaum)#64
2022 / 1巡 / 25位 / アイオワ大学
今年のドラフトでレイブンズが最初に指名した選手。アイオワホークアイではオフェンスラインのリーダーを担当。学生時代にはカンファレンスのオールスターにニ回選出。
OG ベン・クリーブランド(Ben Cleveland)#66
2021/ R3 / 94th / ジョージア
OG パトリック・メカリ(Patrick Mekari)#65
2019 / ドラフト外 / カリフォルニア大学
オフェンシブガードとしてチームと契約したけど、2021ではセンターとして出場するy予定。チームにどう影響するか。
FB パトリック・リカルド(Patrick Ricard)#42
2017 / ドラフト外 / メイン大学
レイブンズ歴=プロ歴のフルバック。すでに28歳なので身体はかなり酷使しているだろうと思われます。毎年引退と向き合ってる苦労人です。
Kジャスティン・タッカー(Justin Tucker)#9
2012 / ドラフト外 / テキサス大学
レイブンズの重要なキッカー。実はロースターの中で上から8番目の高給取り。ドラフト外選手であるが、第47回スーパーボウル優勝の経験もしております。2019/4/24に、レイブンズと4年の延長契約締結。金額は$20Mでした。キッカーではセインツのルッツとほぼ同額。最上位クラスですね。おめでとうございます。
D#チーム主要選手
レイブンズD#は、スター選手が多い。DLには1巡はいないが、それを支えるLBはほぼ全員がドラフト1巡選手。だけでなくCBやFSにも1巡のアスリートを配置して、ディフェンスチームは鉄壁の様相をなしている。2023年ポストシーズンで最強のディフェンスチームだと言って良いと思います。
DE ジャスティン・モデュブイケ(Justin Madubuike)#92
2020 / 3巡 / 71位 / テキサスAM
NT マイケル・ピアス( Michal Pierce)#58
ドラフト外 / サムフォード大学
DE ブロデリック・ワシントン(Broderick Washington)#96
2020 / 5巡 / 170位 / テキサス工科大学
LB オダフェ・オウウェ(Odafe Oweh)#99
2021 / 1巡 / 31位 / ペンステート
LB ロークワン・スミス(Roquan Smith)#0
2018 / 1巡 / 8位 / ジョージア大学
CB マーロン・ハンフリー(Marlon Humphrey)#44
2017 / 1巡 / 16位 / アラバマ大学
デビューしてから、移籍することなくずっとレイブンズの純血選手。2018年シーズンはパスディフェンスで15回と素晴らしい記録。2019年はチーム躍進の年でもあり、彼も大きく活躍しました。プロボウルに選ばれオールプロ1stにも選出。2023年シーズンは怪我のため調子があがらず、22本タックルにとどまってます。
SS カイル・ハミルトン(Kyle Hamilton)#14
2022 / 1巡 / 14位 / ノートルダム大学
隠しきれないスター感。かなりのイケメンセーフティーです。2年目、2023年は63本のタックル、FF1本、インターセプト4本、パスディフェンス13回と大回転の活躍。出身地はジョージア州アトランタ。身長が193cmと大きく手の長さは2mを超える。垂直跳びで1m、40ydsは4.59sとポテンシャルの塊。
FS マーカス・ウィリアムス(Macus Williams)#32
2017 / 2巡 / 42位 / ユタ大学
セインツの名DBとしてリーグでも有名だった選手。満を持してレイブンズに移籍ですね。契約金額はさすがの5年70ミリオン$。(96億円/5年)
ちなみに、2017年のディビジョナル・プレイオフ。バイキングス戦でミスタックルしたのは彼です。詳しくはこちらの記事参考に。
CB ブランドン・ステファンズ(Brandon Stephens)#21
2021 / 3巡 / 104位 / SMU
2023年はインターセプト2本、タックル57本。
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