アメリカンフットボールはハードコンタクトスポーツ。その激しさから素晴らしいエンターテイメント性を持ってます。だが同時に脳震盪問題というネガティブ面と常に背中合わせである。
現在も、脳震盪(コンカッション)の後遺症が原因で現役引退後、自殺したり犯罪を犯したりといった事件が後を絶たない。これについて詳しくは、別記事「アメフト映画コンカッションはNFLの闇をえぐった名作だ」をご参照ください。
この映画を観たらわかるんですが、後遺症で悩んでいるベテランたちや遺族たちに、リーグは総額10億ドル(1100億円)以上もの巨額な補償金を支払うことで合意しています。選手も家族も健康を犠牲にする恐怖もあり、リーグも金で解決する下策はとるべきでない。なんとかしないといけん課題なのです。
この問題に正面切って向き合って、新しいヘルメットが開発してローンチされています。その名も「ZERO1」。ちょっと簡単の解説しましょう。
ワシントン大学発の「柔らかいヘルメット」ZERO1
このヘルメットを開発したのはシアトルに本拠地を構えるVICIS社。同じくシアトルの地元、ワシントン大学の研究チームとともに開発し、製品化に成功しました。
初期投資額は2000万$。日本円にして25億円余りにもなり、その決断たるや相当なものと思います。
脳震盪とは文字通り脳が揺れること
堅いヘルメットで覆ったところで、打撲や裂傷は防げても、頭蓋骨内部の脳が揺れることは防げない。それが蓄積すると脳の萎縮という後遺症を引き起こす。そうなると人間は冷静さや、思いやりがなくなったり、攻撃的になったり、自傷行為を起こしたりします。
ワシントン大学とVICIS社が目指したのは衝撃吸収力
これを見るとわかりますが、新開発されているZERO1はここまでヘルメットがたわみます。衝撃吸収力の高さが伺いしれます。
手で押すとたわむほどの柔らかいアウターとRFLXと呼ばれる中間素材。ハードシェル、パッドという4層構造になってます。「ペコペコアウター」とRFLXが革新的。この安全性テストで、NFL公式リデル社を含める他社ヘルメットと比較テストをしたらら、最強レベルの評価がでた。
ここにちょっと動画を載せておきます。本当にびっくりするくらい柔らかそう。
これが実物の断面図。中間層のRFLXという技術が実に大きく貢献しているようです。
こうしてVICIS社のヘルメットは25チームからオーダーが入った
地元NFLチームのシアトル・シーホークスのWRダグ・ボールドウィンは、VICIS社の開発費用に私費を投じたそうだ。追加の開発費用は4000万ドルということだったそうな。
地元チームのシーホークスだけでなく、NCAAのそれぞれの大学からも多くのオーダーを受け、VICIS社は大きな成長を遂げています。それくらいプレイヤーにとってヘルメットは大事な道具なんですね。
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