アメフトファン、NFLファンの僕ですが、この映画はアメフトがもつ闇をしっかり見せてくれました。ちょっとNFL批判になる話になりますが、これもまたフットボールの側面。良い部分と悪い部分の矛盾する両面を見ることにより、アウフヘーベンが起きることを願い、記事にまとめました。
今回の記事では、そんなアメリカンフットボールの闇の部分、脳震盪問題についてまとめてみました。それではどうぞ。NFLが日本でもっと浸透しますように。
- まず、この話は完全なる実話。マイク・ウェブスターの話です
- 死因は頭部への度重なる打撃による脳障害
- しかしNFL周辺のリアクションは「黙れヤブ医者、アメリカの足を引っ張るな」
- コミッショナーの交代
- しかし社会現象は止まらなかった
- この映画が提示する問題はまだ解決していない。
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まず、この話は完全なる実話。マイク・ウェブスターの話です
話の中心人物はこの人、ピッツバーグ・・スティーラーズのセンターだったマイク・ウェブスター。
彼がプレイしたのはピッツバーグ・スティーラーズの黄金時代。QBテリー・ブラッドショーを中心に、スティール・カーテンの異名をもつ強烈ディフェンスチームがリーグを席巻していた時代。
センターを務めていたウィスコンシン大学出身のマイク・ウェブスターは、数々の試合に出続けスナップを積み重ねた。頑丈でハードにコンタクトするプレイスタイルに、いつしか彼は鉄人マイクと呼ばれるようになった。
年を重ねた後、彼はキャリアを閉じました。彼の現役時代の偉業を讃え、彼はフットボールの殿堂に入りました。人々から讃えられ名誉ある素晴らしいフットボール人生でした。
しかし、彼には明らかなる障害が残りました。50歳にも満たない年齢にも関わらず、認知障害・アルツマイナー症候群、さらに偏頭痛やイライラ、情緒不安定な精神状態などにより、彼は薬漬けの余生を送ることになりました。
そして50歳を迎えた年、彼に突然の死が訪れます。
鉄人ことマイク・ウェブスターの死を、ナイジェリア出身の検死医師であるDr.ベネット・オマルが、真実を明らかにせんと動きます。
死因は頭部への度重なる打撃による脳障害
検死の結果、彼の脳は健康なものに比べ、明らかに萎縮し、本来の機能を果たせなくなっていた。明確な脳障害(CTE)があり、これは普通の生活をしていては起こりっこなかった。
人間の頭部は60Gの衝撃にしか耐えられない。しかしフットボールの衝突は100Gになる。プロフットボール選手ともなれば、幼少期からフットボールの練習を重ねている。彼が試算した結果によると、不審死したマイク・ウェブスターは、70000回を超える衝撃を重ねていたそうです。それが原因であると、オマル医師は論文に結論付けました。
そして近年、同様の原因で亡くなった選手が他にもいました。それが同じくスティーラーズのOG、ジャスティン・ストルゼルジャイクでした。また彼以外にもスティーラーズだけで不自然な死を迎えたのが12名いたのがわかりました。
オマル医師は、これはフットボールというスポーツがもつ根幹的な問題点だと考え、他にも多数の犠牲者が存在する。さらにプロに限らず、これからもまた不幸の連鎖が続くことを大きく問題視し、NFLを徹底して批判、組織改革を主張するのです。
しかしNFL周辺のリアクションは「黙れヤブ医者、アメリカの足を引っ張るな」
NFLはアメリカでもっとも成功しているスポーツビジネス。男同士の激しいものだからこそ、観衆は熱狂し注目する。いくら社会悪があろうと、それよりもプラスの面が強いんだ!経済に与える影響、お金の無い貧困層が夢をもち挑戦すること、各地域それぞれのアイデンティティを形成していること。それら全てがアメリカの大事な資産である。それはNFLにしかできない。
コミッショナーの交代
NFLは、この時期にコミッショナーを、ポール・タグリアブから、現在のロジャー・グッデルに変わることになる。新コミッショナーのグッデルは、ただちにオーナー会議を開催し、「脳震盪問題」を議論した。しかしこれは、Dr.オマルから始まった反NFLの社会現象を鎮静するための建前だった。
しかし社会現象は止まらなかった
頭部へのダメージと脳震盪、障害が影響しているかどうかについて、アメリカ連邦政府は、NFLに対して動き出した。ロジャー・グッデルは裁判所に何度も足を運ばされ、徹底的に叩かれた。
最終的に、連邦議会はNFLに改善命令を出し、NFLは脳震盪への影響を軽減する方向で落ち着いた。
この映画が提示する問題はまだ解決していない。
脳震盪問題は、ルールの改正や、練習中のロボットの導入など、様々な形で改善に向かおうとしている。しかし、まったく無くなろうとはしてない。
2011年に5000人を超える元NFLプレイヤーが、リーグを相手に訴訟を起こしています。訴訟内容は、当然上記のものです。2015年に和解が成立。オマル医師にアメリカ国籍が認められたのも、2015年。
そしてこの映画は2015年の冬に公開されました。まだまだアメリカでは現在進行系の問題であるということ。NFLのことを愛している反面、それを改善したいと願っている人がいる。この両面の事実をつぶさに描いた名作だと思います。
NFL関係者とその家族は、この映画を無料でみれるようにした。という話もあり、オマル医師が投げかけた運動はまだ終わっていないということです。
ぜひ、ご覧になってください。