アメリカンフットボールは、激しいコンタクトスポーツです。常人離れした体躯に恵まれた男たちが、切磋琢磨して身体を鍛え上げ、筋肉の塊になった超人たちが、猛烈なスピードでぶつかり合う。
その激しさゆえに、エキサイティングなゲームが生まれ、ファンの目が釘付けになる。これがフットボールの魅力の一つであることは、ファンならずとも理解できる話。
しかし同時に、選手たちは激しさの犠牲になっています。大なり小なり脳震盪を繰り返すと、脳は萎縮を見せ倦怠感や焦燥感、暴力性といった障害が残ります。これがDV、殺人などの事件を引き起こす大きな原因になっています。(これについては映画コンカッションを観てもらうと良くわかります。)
この問題に対して、NFLコミッショナーは脳震盪問題(コンカッション問題)に対して、ルールを改正したり改善に善処しています。
今回は、コンカッションの現実を調べて記事にしました。NFLが日本でもっと浸透しますように。
脳震盪の数は4年間で半減している
唐突ですが、これが実数です。2015年の年末に映画「コンカッション」が公開され、大変に論議を呼びました。
コミッショナーを始めリーグを経営するマネジメント層は、直ちに改善に向けてルール改正に動き出しました。
結果、2015年に275人から、昨年2018年シーズンでは135人まで、脳震盪になった選手が減りました。割合で言うと完全に半減です。
これに「まだ130人もいる」との視点もあれば、「大きく成果を出せた」という視点もあるでしょう。過去の行動を検証するには、確かに効果があったと振り返るべきだと思います。
どんなルール改正が効果を見せたか。
最も脳震盪が起こりやすいのは、キックオフの時です。キックしたボールが高く上がり、10人全員が全速力で走り出す。リターンチームは、マグロの大群の様な相手に全身で体当たりしながら、ボールキャリアを守る。このプレイがとにかく危ない。
2018年シーズンになる頃、以下のルール改正が行われました。
①助走なし(No Running Start)
②両翼5人ずつ(5P on each side)
③かつスペースを開けて並ぶ
④レシーブは8人以上、キックラインから15ydsに配置
⑤ボールが宙にあるウチは接触禁止
⑥ウェッジブロック禁止
の六点です。コレがずいぶん効果的だったようで、脳震盪の症例が激減したそうです。AAFではキックオフリターンが無いルールになってます。将来的にはNFLもキックオフがなくなり、いきなり30ydsからスナップが始まるのかも知れないです。
ちなみに、これがウェッジブロック(Wedge blocking)です。クサビ型になりボールキャリアを守るわけですね。この布陣を取ると直線への突破力が猛烈に増えます。戦国時代や三国志が好きな人には、感覚的にわかると思います。魚鱗の陣ですね。
でも、2018年からNFLで禁止されました。リターンチームに有利に働き、ブロック側が大怪我するからです。
もう一つ効果があるのは、ヘルメットの進化
もう一つはヘルメットの進化です。アメフトといえばリデル(Riddell社)のヘルメット。こちらも「スマートヘルメット」なるものを開発し、技術の面で脳震盪を撲滅しようとしています。
また以前、こちらの記事でも書きましたが、西海岸のベンチャー企業も、新しいhelmetの開発に動き出してます。別名「ペコペコメット」。シーホークスや49ers、一部のカレッジチームでも実用しています。
まとめ
「無理だと思えば進化は止まる」「言い訳は進歩の敵」という言葉があります。アメリカンフットボールに怪我はつきもの、脳震盪は男の勲章、などという古臭い慣習に流されず、「この問題を必ず解決してみせる」と意気込んでいる奴らがいることを喜びたい。
願わくば、自分の心の中にいる「どうせ無理でしょ」と夢を殺すドリームキラーをやっつけて、何事にも諦めず、未来を拓く人材でありたい。
NFLプレイヤーたちの健康がしっかりと担保され、ゲームがエキサイティングでありますように。
最後までお読みくださってありがとうございました。