さて、AFCのもう一つの大一番。デショーン・ワトソン率いるヒューストン・テキサンズvs、爆撃機パトリック・マホームズ率いるカンザスシティ・チーフスの対戦です。
こちらはやはり、下馬評ではカンザスシティ・チーフス優勢と言われてました。というのはチーフスの攻撃力の高さが故です。オフェンスランキングではリーグ5位。特にパッシングプレイに定評があるのがチーフスオフェンスです。その要となっているのが、先述のパトリック・マホームズ。そしてレシーバー陣を代表するのがTEトラビス・ケルシーですね。彼らのホットラインがとにかく強烈で、レギュラーシーズンも12勝をあげて堂々の地区優勝を飾ってきました。
そしてテキサンズのデショーン・ワトソンは、マホームズとは違いますが超優秀なQB。ポケットムーブが実に巧みで、多少崩れたプレイでもガンガンにポジティブに攻めてきます。またテキサンズO#のWRデアンドレ・ホプキンスの神キャッチでゲームを決めてきた経緯もあります。LTのラレミー・タンシンと共に、オールプロのファーストチームに選ばれており、ラン・パスともに高い精度で展開してきます。さらにD#でも猛獣JJワットが大胸筋断裂からの復帰。100%のパフォーマンスは出せないまでも彼の存在感は非常に大きい。そう思います。
それでもやはりチーフスの爆撃機、パトリック・マホームズに注目してしまいます。彼はまるでサッカーのファンタジスタのように、ゲームを見事にひっくり返してきた人物です。流れが相手に傾いたなと思った矢先に強引に引っ張る。こういうことができる人がいると、チームのモチベーションがまるで違います。パッカーズのアーロン・ジョーンズもそうですが、ギリギリのところまで来ても、選手の気持ちが切れないんですよね。だからこそ逆転劇が起こるんです。今回もそういう期待感を込めて、チーフス勝利の下馬評優勢でした。
さぁ、それではどのようなゲームになったのでしょうか。少し振り返ります。
日本でもっとNFLが浸透しますように。
ゲームを優勢に運んでいたのはテキサンズ
まず開始5分程度で完全にフリーになったWRケニー・スティルズにディープパスが通り、そのままタッチダウン。チーフスのDB陣はTEにつられて前にでてしまってて見事にえぐられました。
その後、カンザスシティ・チーフスのパントを見事にブロックしたスペシャルチームが、そのままタッチダウン!1Q開始5分いないに14点もの差がつく大きなアドバンテージを得ました。
チーフスの方は爆撃機の調子は悪くないものの、WR陣がうまくキャッチできない感じでリズムにのれない。そのカバーをD#チームが頑張ってテキサンズO#チームを封じ込めパントに追い込むんですが、最悪なことにそのパントを、KCリターンチームがファンブル。自陣8yds地点でターンオーバーを食らうという最悪の流れです。
この棚から牡丹餅的な大チャンスを、テキサンズはしっかりものにして、3本目のタッチダウンをつかみ取り、21-0という大量リードを第1Qで手にしました。普通こうなるともうゲームはテキサンズのものです。D#チームはタッチダウンだけはなるべく防ぎつつ時間をつかい、O#チームはターンオーバーに気をつけて、ランプレイ中心に時計を進める。
しかし反撃の狼煙がチーフスから上がる
窮鼠猫を噛むではありませんが、完全にリードされたチーフスは、猛反撃にでました。まずリターナーのWRメコール・ハードマンが、自陣0yds地点からの60ydsのスペシャルリターンを魅せます。そしてO#ではトラビス・ケルシーがプレイのリズムをつけてあっという間にタッチダウンを一本返しました。チーフスの本領発揮というところです。
テキサンズのO#チームは3アンドアウトに追い込まれ4thダウン4yds。自陣30ydsでパント。しかし、これがどういうわけだか、パントフェイクのギャンブル!!これは最悪の最悪。完全なる悪手でした。まだまだ2ポゼッション差で相手にチャンスを渡してはいけません。しかもこれが大失敗。完全にチーフスに流れが傾いてしまいます。
チーフスはワンパターンですが、またもトラビス・ケルシーにパスを投げます。タッチダウンを狙った実に積極的なプレイコールで、少しでも気を抜けば一刀両断に斬られる示現流の太刀のようです。その気迫に押し負けたかのように、CBがパスインターフェア。これで10yds地点まで攻め込まれてしまいました。
そして、このチャンスをものしたのが、やはりトラビス・ケルシーです。崩れたプレイからマホームズがポケットから抜け出し、僅かな隙間をめがけてケルシーにタッチダウンパスが放られます。これでチーフスは1本差に攻め寄りました。
テキサンズにとって悪い流れはまだ続きました。KCのキックで始まる次のドライブ。リターンチームが走り出してタックル。そしてまさかのファンブル。チーフスが難なくそれをキャッチし、敵陣10yds付近まで進みます。この時まだ2Q残り8分。この後、またもエンドゾーンを狙い、見事にケルシーへタッチダウンパスが通ります。2Q残り6分半。チーフスはたったの8分間で3本のタッチダウンをあげ、テキサンズにFG3点差まで追いついてしまいました。
こうなってくるともうチーフスはやりたいほうだい。トラビス・ケルシーに意識が行き過ぎると他のWRタイリーク・ヒルへのカバーが薄くなる。マホームズのディープパスをケアするばかりに中央が空いてしまい、マホームズに走られる。全てがチーフスにとって良い方向に回りだします。そしてついに逆転のタッチダウン。またもトラビス・ケルシーでした。KCは2Qの15分足らずで4本のTDをあげる猛攻撃をみせてくれました。先制していたテキサンズは遣る方無い様子です。
後半戦もチーフスの攻撃力炸裂
3Qに入ってからも調子の良いチーフスは相変わらず。第3Qにも3本のタッチダウンをあげて31-48とテキサンズを突き放します。これもやはり何度もいいますが、トラビス・ケルシーの存在がとにかく大きかった。彼を意識しすぎるあまりに、DBは不必要なパスインターフェアや、ホールディングが目立ち(しかも大事な場面で・・・)、チーフスのオフェンスをレッドゾーンに呼び込んでしまってました。これが無ければゲームは全く違った様子だったと思います。やっぱりファウルって命取りですね。
第4Qに入ってからは、チーフスも無理をしないように展開していた感じです。それでもダメ押しのFG3点を押し込み、31-51というスコアでテキサンズを倒しました。これほどの急展開を見せたゲームは、なかなか見ることが無いと思います。
まとめ
The Texans go for the fake punt and the @Chiefs defense makes a huge play! #ChiefsKingdom #NFLPlayoffs
— NFL (@NFL) 2020年1月12日
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さて、このゲームで一番注目したいのは、チーフス圧倒的な攻撃力のマホームズ、そしてTEトラビス・ケルシー。ではなく、テキサンズの悪手となった4thダウンギャンブルのパントフェイクです。なんであの場面であの選択をしたのか。未だにわかりません。彼らチーフスの攻撃力の存在を甘く見ていた、というようにも思います。孫子の兵法にある「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」という至言がありますが、テキサンズのとったオプションはあまりにも軽々しく思えました。
あの選択さえなければ、ゲームはもっと振り回せたと思います。迫りくるチーフスとは言え、WRホプキンス、QBワトソンならば2本のタッチダウンアドバンテージを有効に活かせたと思います。わざわざ敵の得意分野である「打ち合い」にゲームをメイクしてしまったのが、この試合を失った最大の要因のように思いました。
さて、かなり荒っぽいながらもコマを進めたチーフスは、次戦テネシー・タイタンズと対戦します。向こうは南地区、こちらは西地区です。会場はもちろん、チーフスのホーム、アローヘッドスタジアムです。抜群の攻撃力を誇る、ケルシーをタイタンズのDB陣がどうカバーするのか。そして呂布奉先のように相手をバタバタなぎたおすRBデリック・ヘンリーをKCはどう処理するのか。
どちらにせよ、大変おもしろいゲームになりそう。このゲームの勝者がスーパーボウル進出です。タイタンズが勝てば、1999年以来21年ぶりのスーパーボウル進出。チーフスが勝てばなんと、第一回スーパーボウル(1966年)、第4回スーパーボウル優勝(1969年)以来、3度目の晴れ舞台です。どちらが勝利してもドラマチックな舞台になることは間違いありません。非常に面白いチャンピオンシップになりそうです。