第54回スーパーボウルは、HCアンディ・リード率いるカンザスシティ・チーフスが50年振りに見事優勝しました。
さて、ゲームは当初49ersが勝利する流れでした。同点でハーフタイムを迎え、第3Qに10点差をつけられ、手も足もでないという状況だったチーフス。それが第4Qに入った途端に、21点をもぎ取り大逆転!!!
この出来事を、「ゲームモメンタムがチーフスに流れた」という一言で解決したくないと僕は思うのです。なぜなら49ersはとても強力だったし、誰が見ても49ersには弱点らしいものはなく、ゲームを掌握していたと思うからです。
なぜ、チーフスは勝利できたのでしょうか。そこにはQBパトリック・マホームズを活躍させたHCアンディ・リードのリーダーシップがあったのではないかと思います。
今回の記事には、組織の一員として果たすべきリーダーシップについて学びたいと思います。
日本でもっとNFLが浸透しますように。
絶体絶命といってよい状態から逆転したチーフス
この写真みるだけで話わかると思いますが、49ersは後半スタートしてから第4Qまで完全にゲームを掌握していました。オフェンスチームは第3Qに追加10点とって、2ポゼッションをリード。ディフェンスチームも、チーフスを封じ込めていました。
残り12分あたりで、マホームズのパスを見事にインターセプト。この流れは変えられない、49ersはこのまま勝利するだろうと、僕は思っていました。
しかし、その10分後。たった10分後。49ersは21点を奪われました。21点です。タッチダウン3本です。信じられません。完璧に封じ込めていたチーフスオフェンスは、いったい何が変わったというのでしょう。
部下を信じ切り、信じて任せるリーダーの度量
あのインターセプトされたパスを投げたあと、きっとマホームズは自信を失い、相手に萎縮しながら仲間に申し訳ないトボトボとした気持ちで、サイドラインに返ってきたことでしょう。
「失敗を気にするな、信じて投げつづけろ。」
そんなマホームズに、アンディ・リードは、そのように伝えたそうです。このときに「何を語るか?」も大事でしょうが、それより「どんな表情をリーダーがしているか?」が重要だと、僕は思うんです。
オフェンスチームやディフェンスチームはそれまで確かにうまく行かない場面が何度もありました。その度アンディ・リードは何度もカメラで抜かれてましたが、どれだけ失敗しようが、それにリアクションすることはありませんでした。
そして「こりゃダメかもしれんぞ」という、あのインターセプトの場面。それですら、マホームズの才能とチームの能力を信じ切っていました。そんな闘志あふれる顔で、「大丈夫だ!お前ならできる!」と言われたらどうでしょう?僕がマホームズなら、もう一度やる気が生まれてくると思うのです。
この「信じ切る」というのがなかなかできない。これが本当にすごいなと思いました。ペイトリオッツのビル・ベリチックもそうですが、「最後の1秒まで絶対に諦めない」というのは、わかっちゃいるけどなかなか出来ないことだと思うのです。
その後、チーフスの大逆転劇が始まる
マホームズはHCの言葉どおり、諦めなかった。49ersのディフェンスは変わらず超強力で、残り時間9分あたりで3rdダウン15ydsを残していた。ボール位置は自陣35yds。その状況からマホームズは、タイリーク・ヒルに44ydsのロングボムを決め、敵陣20ydsにまで迫るんです。
マホームズはレシーバーの位置を確認することなく、DBの位置だけをみて、自らの感覚で投げたそうです。そのロングボムをNFL随一の俊足タイリーク・ヒルがスペースに戻り見事にキャッチ。なんという阿吽の呼吸でしょう。
このロングスローの成功で、一気にゲームの流れが変わったと思います。ゲームチェンジャーと言われる二人の才能が爆発した瞬間でした。そしてこのドライブはTEトラヴィス・ケルシーのタッチダウンが決まり、いよいよ3点差に迫るわけです。
I can’t wait to see different camera angles of this throw.
— Super Bowl Champions (@Mahomes_Fans) February 3, 2020
The Mahomes legacy is off to a terrific start.
pic.twitter.com/9tAuclWMr8
そしてその後、WRサミー・ワトキンスが決めてくれます。CBリチャード・シャーマンにゲーム中ずっと封じ込められていた彼が、見事に勝利するわけです。
Kevin Harlan on the call for the go-ahead touchdown to Damien Williams. #SuperBowl #SBLIV pic.twitter.com/tvTfejtmYH
— I Post GIFs (@IHaveFourBalls) February 3, 2020
そしてRBダミアン・ウィリアムスがギリギリのタッチダウンを決めます。このときもギリギリのタックルをしたのがCBリチャード・シャーマン。ほんの少し、ほんの少しで逆転されたわけです。
そして、最後のダメ押し。まだまだ逆転可能だった49ersの心を叩き折るタッチダウンが生まれました。先程タッチダウンを決めたRBダミアン・ウィリアムスによる35ydsタッチダウンです。
DAMIEN. WILLIAMS.
— NFL (@NFL) February 3, 2020
38-YARD TOUCHDOWN. #ChiefsKingdom
📺: #SBLIV on FOX
📱: NFL app // Yahoo Sports app pic.twitter.com/vfeysZKipJ
このタッチダウンは、今までの49ersだったら防げていたんだと思うのです。しかし勝利を疑わず信じてなかった49ersが大逆転されて、自信を少し失ったのでないか。そんなふうに思ったのです。勝利を信じたチーフス、勝利を信じ切れなかった49ers。そんな違いが生まれたと邪推してしまったのです。
マホームズは史上最年少のスーパーボウルMVPに。
見事残り9分で21点をもぎとったチーフスは、史上稀にみる大逆転を果たし、スーパーボウル優勝をもぎとりました。61歳になるアンディ・リードは人生初のビンスロンバルディトロフィー。
マホームズは史上最年少でスーパーボウルを優勝、そして史上最年少でMVPという大快挙。NFLの次世代スターが誕生した瞬間だと思います。
ゲームがスタートする前から、「コーチに、優勝をプレゼントしたい。」と語っていたマホームズ。彼ら二人の姿はまさに理想的な師弟関係だと思いますし、リードHCのリーダーシップは実に素晴らしいと思いました。
戦略的な面、マネジメントの面などでは、正直カイル・シャナハンHCに軍配があがるのかもと思いましたが、アンディ・リードHCの精神的な面は本当にすごいと思いました。そしてそれに応えたマホームズを中心とするオフェンスチーム、チャンスをつないだディフェンスチーム。本当の意味で全員が一丸となったからこその大逆転劇だったと思います。
感動のスーパーボウルをありがとうございます。ますますNFLのファンになった。そんな最高のシーズンでした。