プレーオフを勝ちあがり、夢の舞台スーパーボウルにあがったサンフランシスコ・49ers。勝負に勝利してきたのは、何よりもまず選手たちの力なのですが、アメリカンフットボールという競技についていえば、指導者であるHCやO#、D#のコーディネータの影響が多分にあると思います。
フットボールは全てがセットプレーのスポーツであり、レベニューシェアが厳格に機能して能力が均衡している状況では、「どんな戦略で戦うか?」が非常に重要なファクターなのです。ヘッドコーチが変わるだけでチーム力が大きく変化するのが、フットボールの魅力の一つです。
今回、スーパーボウルに登場する両チームを、コーチという視点で紹介したいと思います。
日本でもっとNFLが浸透しますように。
HCカイル・シャナハン(40歳)
アンダードッグと言われて長い49ersを、ここまで強豪に育て上げたのは、2017年にHCに就任したカイル・シャナハンの功績が大きい。当時37歳の若さでHC職に就任したのは、ラムズのHCショーン・マクベイに次ぐ歴代2番目となる。
が、彼が28歳のときにテキサンズのOCとしたのは、未だ抜かれたことのない記録。シャナハンはO#畑一筋の人間。2016年にはファルコンズでOCを担当し、比類のないハイパーオフェンスを構築してスーパーボウル進出に大きく貢献してきました。
カッとなりやすい性格をもってて、人格的には難ありな部分もありますが、現役コーチの中では群を抜いた戦術家です。49ersはOCをセットせず、全てカイル・シャナハンがプレーコールを行います。
彼の父、マイク・シャナハンもスーパーボウルを三回制覇しています。最初は1994年、49ersのOCを担当しているときでした。スティーブ・ヤングをQBに擁し、チャージャーズを倒してます。そして今度はブロンコスのHCに就任し、天才QBジョン・エルウェイと共に第32回33回と連覇を果たしています。
これがまた不思議なことに、3回制覇したうちの2回はマイアミ開催なのです。奇しくも息子カイルがスーパーボウル挑戦するのも、マイアミ開催、しかも49ersです。運命的なものを感じます。
カイル・シャナハンの人となり
彼が生まれたのは、アメリカの北壁、ミネソタ州ミネアポリスです。父マイクが当時大学のHCをしていたころに誕生しています。彼が高校生になるころ、父が49ersのOC就任が決定し、カリフォルニアのサラトガに転校します。その後はテキサス大学に進学し、ロングホーンズの一員としてWRをしていました。
彼は大学卒業後、直ちにコーチへの道を歩み始めました。バッカニアーズ、テキサンズ、を経て、父がHCをするレッドスキンズ。ブラウンズで1年を経て、ファルコンズOCとしてスーパーボウル51回に挑戦します。カイル・シャナハンOCはほぼ勝利間違いないほど得点していたのですが、神がかったQBトム・ブレイディに大逆転されてしまう。なんともドラマチックなスーパーボウルでした。
ゲームには負けたものの、ファルコンズO#に爆発的なパワーをもたらした戦略家としてカイル・シャナハンは高く評価されていました。2017年に49ersのHCとして指名を受けます。彼がまず行ったのは、ビジョンの徹底でした。スーパーボウルを優勝する。そのことだけを願い、既存のQB陣やセカンダリーを一掃。チーム再建に向けて、とことんアンバランスな状態で(いわばガタガタな状態で)2017年シーズンに突入しました。
結果は散々でした。全戦全敗といって過言でないほどでした。しかし、シーズン途中にNEペイトリオッツから多額の報酬でQBジミー・ガロポロを買い取ります。おそらくシャナハンはずっと彼を狙っていたんだと思います。これでチームが大化けをしました。2018、2019年の両方で上位ドラフト指名権を行使し、スター選手を獲得。見事49ersは大化けを果たしました。
シャナハンはおしゃれなリーダーです
シャナハンの力の抜けたフィッティングは見事だと思います。アイテムの使い方も上手。足元は基本スニーカーで、サイドラインではスポンサーのNIKEを履いてますが、ふだんはカニエ・ウェストのアディダスを愛用している様子。
彼しかかぶってないのが、シャナハンオリジナルのニューエラ。通称シャナハットと言われ、ネットではオフィシャルキャップの2倍近い値段で取引されてます。40歳という年齢もありますが、実に若々しく、垢抜けていますね。
ちなみに、シャナハンは、タンパベイ時代の2005年に結婚しています。
DCロバート・セラー(40歳)
さて、OCをおかない49ersも、さすがにDCはいます。カイル・シャナハンの全幅の信頼をうけているのが、ロバート・セラーです。HCと同い年で就任と同時にジャクソンビルからカイルが引き抜いてきた人物です。
ミシガン州の出身で、レバノン移民の家族に生まれた人です。大学では経済学を学びながらフットボールに明け暮れ、コーチ業をスタートしてます。
彼が25歳になる2005年、テキサンズにスカウトを受けて、プロの世界に踏み入れました。当時のHCはゲイリー・キュービアック。そこで同級生のカイル・シャナハンと出会います。カイルはメキメキ出世して28歳でOCに。
その後、シアトルに移籍し、スーパーボウル制覇に貢献します。2017年にカイルがHC就任すると、直ちにスカウトの電話がなり、49ersで一緒にリングを目指すことになったそうです。
まとめ
いかがでしょうか。カイル・シャナハンについて、少し理解してもらえたでしょうか。超攻撃型タイプのHCであり、プレーコール全て牛耳ってるというのは、他のチームではあまり無いように思います。しかし、49ersの魅力はO#よりもD#です。レバノン人の血を引くDCロバート・セラーがどうマホームズを抑えるか。大変注目したいと思います。